本の紹介
感想
戦時中に東京宝塚劇場で風船爆弾を作らされていた女学生の目線で戦争が語られています。
多くの証言や聞き取り調査の結果をまとめた本となっており、
この本を手に取るまでは恥ずかしながら風船爆弾の存在すら知らなかった私にとっては
目を背けたくなるような現実もつきつけられます。
戦争の悲惨さ
東京での空襲が増え、防空壕で寝るようになった女学生による
わたしは、ただ布団で眠りたい。
という一言だけでも心が痛くなります。
また、宝塚劇場での風船爆弾の作業に召集されるようになってからの証言。
隣の山水楼では海軍の軍人さんがいつもおいしそうなものを食べていた。御馳走を食べているのが窓から見えた。
(中略)
わたしは、炊き増しした茶色い米を、ふかした芋を、炒った豆を、噛む。
物が不足していた時代にも一部の人は変わらぬ暮らしをしていたことが、淡々と綴られます。
女性であること
空襲で女学生が2人死亡しても、その女学生の名前は記録されない。
ラジオで戦死した兵隊の指揮官の名前が読み上げられても、女性の名前が読み上げられることはない。
など、女性であることについても本を通して語られます。
私が最も衝撃だったのは
街が、首都が、陥落するとは、つまり、そういうことだった。
この街の、大森の、全国の街の慰安所に、わたしたちのうちの女が、少女が、集められた。
という文章です。
女性にとっては、1945年8月15日で戦争が終わったわけではなかったということを初めて知りました。
そして本の中で何度も繰り返されるこの言葉がまた刺さります。
わたしは、男だったらよかった。
あるいは、わたしは、そんなことは考えない。
淡々と綴られる事実
ここで引用させていただいた文章でも、独特であることは伝わったかと思いますが、
さまざまな女学生の目線で淡々と語られています。
最初は少し読みにくいのですが、だんだん慣れます。
また、淡々と語られているが故に心に突き刺さります。
是非手に取ってみてください。
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